女性フットサラーの為のコンディショニング講座の最近のブログ記事

16/05/06
【コンディショニング講座】最終回全体のコンディショニングを

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【正しい姿勢】
 
 フットサル界での活動を始めた頃、選手たちのセルフコンディショニングを見ていて気になったことがあります。それは、下肢に関しては色々と気を遣って取り組んでいるのですが、上肢や腰背部に関してはそれほど気にかけていないということです。フットサルは主に足でボールを蹴って行うスポーツですから、身体部位における優先順位としてそのような傾向になるのも自然な流れなのかもしれません。しかしながら実際には、首や肩の張り、背中や腰の痛みを訴えて相談に来る選手が非常に多かったんです。
 学生であれば授業中の姿勢、社会人であれば勤務中の姿勢を振り返ってみましょう。前かがみになり背中が丸まっていたり、背もたれに寄りかかって骨盤が後ろに傾いていたりしませんか?美しい脊椎のラインを維持していることが正しい姿勢の前提となります。身体各部位への負担が少なく、本来疲れにくいというのがこの姿勢です。
 
 立位では、正面から見た場合に両肩が同じ高さにあるか、左右の骨盤の出っ張りが同じ高さにあるかを確認してみましょう。横から見た場合には、耳、肩、膝、くるぶしのやや前方が縦ライン上にあるかをチェックしてみましょう。
 
 座位でも、横から見た場合に耳と肩が同じラインにあることが望ましい姿勢となります。正しい姿勢を意識して、胸をピンと張り背中を沿って、肩甲骨を寄せるような反応を見せる方も多いのですが、この際のポイントは「骨盤を立てる」ということです。骨盤が後ろに傾いてしまうと、背中を真っすぐに保てません。決して力む必要はないのですが、しっかりと骨盤を立て、その上に背骨や頭が積み重なっているというイメージを持って座ってみましょう。
 
 背中が丸まると、肩甲骨は外側に開き、肩や背中の筋肉が伸ばされ続け、逆に首や胸の筋肉が縮こまり、血行が悪くなります。また、呼吸がしにくくなるため体内に十分な酸素が行き渡らなくなり、集中力が低下したり、疲れやすくなったりします。運動中においては、体幹や手足の動きが制限され、フォームの乱れからパフォーマンスに影響を及ぼしたり、視野が狭くなったりします。このように、日頃の姿勢も運動中の姿勢も相互に影響を及ぼしていることが分かりますね。ですから、パフォーマンスの向上のためにも、コンディションを良好に保つためにも、日頃から「姿勢」を意識して生活してみて下さい。
 
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【ウォーミングアップの際に】
 
 下半身だけではなく上半身も意識的に動かすようにしましょう。学校や勤務先で日中に同一姿勢を強いられた後の練習や、遠征により長時間の移動を強いられた後の練習や試合では、固まってしまった身体を動かしやすい状態に整えなくてはなりません。例えば肩こりが気になる際に、首や肩ばかりを回す方が多い印象ですが、肩甲骨を多方向に動かしたり、縮こまった胸を開くようなダイナミックストレッチを取り入れるといいでしょう。
 
 つい猫背になってしまう方は、堅くなってしまった脊椎を動かしやすくし、適切なラインを確保するために、胸椎を伸ばしたり(伸展)、ねじったり(回旋)するようなメニューも積極的に行いましょう。また、腰背部に関しては背面を伸ばしたり動かしたりする方は多いのですが、体側へのアプローチも忘れずにしっかりと行うことが大切です。専門家に相談しながら、今の自分の身体に必要な要素は何かを見極め、日頃の準備に活かしていきましょう。
 
 
【ご挨拶】
 
 連載も今回で12回目となりました。あっという間の一年でしたが、女子フットサル界に少しでも有益な情報を発信できていたら幸いです。身体への意識を高めることが、競技力向上につながることは間違いのない事実です。ケガをしない身体、理想のプレーを実現するための身体を作るために、各々ができることはたくさんあります。コンディショニングも重要な要素として捉え、前を向いて頑張って下さい。皆様のご活躍を心よりお祈りいたします。
ありがとうございました。
 
 
16/04/06
【コンディショニング講座】第11回フィジカルテスト

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【フィジカルテストの導入へ】
 国際大会などを通じて海外の女子フットサルを見る機会がありますが、日本がこれらの国々を相手に戦う上で、「フィジカルの強化」は欠かせない要素の一つだと毎回痛感します。体格差のある相手に当たり負けしない身体、スピーディーなプレーやトランジションに対応できるアジリティ(敏捷性)やクイックネス(俊敏性)。アジアでは常に上位につける日本でも、他国に比べてそれらが秀でているかと言えばそうではありませんし、世界の強豪ブラジルやスペイン、ポルトガルやロシアに追いつくためには緊急課題と言っても過言ではないでしょう。
 
 日本国内の大会を見ると、女子フットサルの競技レベルは確実に上がっているという印象があります。しかしながら、他競技では当たり前のように行われている定期的なフィジカルテストを、実際に行っているチームはどれほどあるのでしょうか。競技フットサルとしてもう一歩前進するためには、今現在の体力的なレベルを知り、適切なトレーニングプログラムを組み、その効果を把握するという一連の流れを取り入れる段階へと来ているはずです。
 
【テストを行う意味】
 学校では、「スポーツテスト」を経験したことがあるかと思います。50m走や20mシャトルラン、反復横跳びなどを行い、体力や運動能力を調査するものです。では、スポーツ現場で行う体力測定(フィジカルテスト)にはどういった意味があるのでしょうか。
 
<なぜ体力測定をするのか>
1. 選手個人の能力を向上させるため
2. トレーニングプログラムの効果を確認するため
3. リハビリテーション中の経過をチェックするため
4. 選手の健康状態をチェックするため
5. 研究のため
 
 フィジカルテストを定期的に行うことによって、チーム平均や選手個人の特徴を確認することもできますし、データを比較することで目標設定や選手のモチベーションの向上にも役立てることができます。また、コンディションチェックのツールとして用いることで障害やオーバートレーニング症候群等の予防にも活かせるでしょう。
 
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【テストの例】
 測定結果を確認することだけがテストの目的となってはいけません。そして数多く存在するテストの中から、フットサルに関連する要素を含んだ項目を選択することも重要です。場合によっては、競技特性を考慮しながらアレンジしてもいいでしょう。
 
 いつも練習している体育館やフットサルコートなどで、特別な用具を用いずに簡単に行えるテストであるということもポイントの一つです。また、測定の前には十分なウォーミングアップを行いましょう。
以下、気軽に行えるものとしていくつかのテストを紹介しますので、参考にしてみて下さい。
 
プロアジリティテスト(アジリティ)
用意するもの:
ラインテープ、ストップウォッチ
準備:
5M間隔で3本のラインを引く。
方法:
1. 合図により中央ラインからスタートし、右側のラインに向かい右手でタッチ。
2. 方向転換し、左側のラインに向かい左手でラインをタッチ。
3. 再び方向転換し、中央ラインを駆け抜けた際のタイムを測定。
注意:
・右側のラインは右手で、左側のラインは左手でタッチする。
・2 - 3回繰り返し、最高値を記録する。
・タッチの代わりにラインをまたぐことをルールにしても良い。
・サイドステップで行うなど別条件を設定して行っても良い。
 
300メートルシャトルラン(無酸素性持久力)
用意するもの:
ラインテープ、ストップウォッチ
準備:
25M間隔で2本のラインを引く。
方法:
1. 合図によりスタートラインをもう一方のラインの間を6往復する。
 (25M×6往復=300M)
2. 方向転換の際は、ラインを踏むかラインを超えなければならない。
3. 5分間の休息を挟んで2回試行し、平均値を記録する。
 
300Mシャトルランの代わりに、バスケットボールコートのエンドラインを往復するという方法を取っても良いでしょう。体育館に引かれているバスケットボールコートのラインは、規定ではエンドラインからエンドラインまでの縦の長さが28Mとなっています。それを利用し、5往復を何秒で走りきれるかを測定します。バスケットボール界ではトレーニングとしても活用されていますが、女子フットサルのトップレベルであれば1分以内、スピードを活かしたい選手の場合は55秒を一つの目標とするといいでしょう。
 
<参考文献>
・選手と指導者のためのサッカー医学(金原出版;2005)
・ストレングス&コンディショニング2(大修館書店;2003)
 
 

 

 

 

16/03/02
【コンディショニング講座】第10回瞬時の状況判断

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【瞬時の状況判断】
 フットサルは、コートでボールや敵味方の選手が絶えず動き回り、相互の位置が目まぐるしく変化するのに対応しなければならないスポーツです。そのためには情報収集のために「見るチカラ」が重要になってきます。近年はスポーツ分野におけるビジョントレーニングが注目されるようになってきていますが、フットサルのパフォーマンス向上のためにも重視していきたい分野でしょう。
 
 スポーツで必要な「見るチカラ」は大きく4つに分けられます。
・はっきり見えていること
・動くものを追跡してはっきり見ることができること
・広い視野があること
・瞬間的にパッと判断できること
 
 例えばドリブル中、選手はボールだけでなく同時に相手や味方の動きや位置を把握していなければなりません。このように、あるものと同時に周りを見ることができる視野の広さを「有効視野」と呼びます。ビジョントレーニング関連の書籍には、日頃の練習に取り入れながら実践可能なメニューが紹介されていますから、是非参考にしてみて下さい。
 
 練習時以外でも、移動中の車窓から見える看板の文字を随時確認することで鍛えられる「動体視力」、本や雑誌を一瞬だけ見て閉じ、何が見えたのかをできるだけたくさん思い出すことで鍛えられる「瞬間視」など、日常のちょっとした時間を活用して強化できる能力はたくさんあります。ただ、トレーニングの効果が出るまでには数ヶ月を要しますから、継続して行えるように頑張りましょう。
 
 ビジョントレーニングの詳細に関しては専門書を確認していただくこととして、トレーナーという立場からはその前提となる身体の部分についてお話したいと思います。現代はスマートフォンやパソコン作業などで目の疲れを引き起こしやすくなっていますね。スポーツ中に「目のチカラ」を活かすためには、眼精疲労に対するケアも重要です。目の疲れや肩こり、ドライアイなど自覚している症状があれば、目とその周辺を温めてみましょう。
 また、メガネやコンタクトレンズを使用して視力矯正をしている方も多いと思います。専門医のもとで定期的に診察していただき、視力に合ったものを使うように気をつけましょう。コンタクトレンズはしっかりと洗浄するとともに、使い捨てレンズの場合は必ず使用期限を守るようにしましょう。プレー中にゴミが入ったり、衝撃や接触の影響でレンズが外れてしまうことも少なくありませんから、ベンチには必ず予備を用意しておいて下さい。
 
 視力回復に効果があると言われている食べ物と言えば、ブルーベリーでしょうか。それ以外にも、青魚の脂に含まれるDHAが効果的であるという報告もあります。まずはバランスの良い食事を意識することが大切ですが、気軽に摂取できるサプリメントもありますから、一度試してみるといいかもしれません。
 視野の確保には、正しい姿勢を保持することも重要です。背中が丸まった猫背の状態と、姿勢を正した状態では、視野の広さがかなり変わってきます。不適切な姿勢では、首をはじめとした身体各部位の可動域も制限されてしまいます。「見るチカラ」を発揮するためには、様々な観点からのアプローチが可能ということを理解していただき、パフォーマンスのさらなる向上につなげていただきたいと思います。
 
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【動きにつなげる】
 目をはじめとした五感でキャッチした情報を脳で処理し、身体の動きにつなげるという一連の過程がスムーズであるほど、フットサルのような瞬時の状況判断とその対応が重要なスポーツには有利となります。このために必要となるのが、コーディネーション(調整力)やアジリティ(敏捷性)といった能力でしょう(アジリティトレーニングはコーディネーショントレーニングの一部と位置づけられることもあります)。
 サッカーよりも狭いコートで、急激なストップや方向転換が多く求められるフットサルの場合は、バスケットボールやハンドボールのような脚力、フットワークが求められます。しかし日本の女子フットサル選手の場合は、この部分がまだまだ足りないと思うことが少なくありません。逆に、こういったフィジカルフィットネスを向上させることで、世界でももっと闘えるようになるのではと期待しています。
 上記のことを踏まえ、コーディネーショントレーニングやアジリティトレーニングを積極的に取り入れてみて下さい。全体のウォーミングアップの一部として行うのもいいでしょう。まずは身体のコンディションを整え、その身体を活かし、より良いパフォーマンスにつなげるという全ての過程を見直し、進化していきましょう。
 
<参考文献>
・ 一流選手になるためのスポーツビジョントレーニング(講談社;2014)
・ 選手と指導者のためのサッカー医学(金原出版;2005)
 

 

 

 

16/02/02
【コンディショニング講座】第9回クールダウン

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【クールダウンをしていますか?】
 運動後のクールダウンが重要であることは広く知れ渡っているかと思いますが、実際にその効果を理解し、日々実践している方は意外と少ないのではないでしょうか。練習後や試合後にチームでのルーティーンとして行っているところもあるとは思いますが、ポジションの違いや個々のプレーの特徴、日頃の身体の使い方のクセなどから、酷使する筋肉や疲労の度合いなども変わってきますから、やはり自分の身体に必要なメンテナンスを個別に行う時間も必要でしょう。
 
 女子フットサル選手の競技環境は、タイムスケジュールという観点から見た場合にも厳しい面があることは承知しています。朝から仕事に励み、その後に練習、帰宅後に夕食を済ませたらあっという間に就寝時間、という日々ですよね。週末や祝日も練習や試合、遠方までの移動がさらなる疲労を蓄積させ、リフレッシュする時間も十分にないままに翌日からお仕事。それでも貪欲に上を目指し続けるトップ選手たちを見ていると、そのたくましさに感心させられることばかりです。しかしだからこそ、限られた時間の中でも効果を出す方法や、翌日以降に疲れを残さないための工夫が大切になるのではないでしょうか。
 
【リカバリーもトレーニングの一環】
 トレーニングの後、次の運動までに身体が回復していなければ毎回疲労が蓄積してしまうことになります。フレッシュな身体と披露困憊な身体では、同じ内容のトレーニングでもその質や効果に差が出ることは明確でしょう。酷使した筋肉を早期回復させ、質の高いトレーニングを積み重ねることがパフォーマンスの向上につながることが理解できるかと思います。
 
 また、スポーツは左右非対称なものがほとんどです。そのスポーツ特有の動作を反復することで、身体の一部の筋肉ばかり酷使され縮んでしまうことがありますので、ストレッチなどを活用し、適切な長さに戻してあげることで身体のバランスを調整することも大切です。お風呂上がりなどは筋温も高まり、筋や腱の粘性が低下するため、比較的快適に伸ばしやすくなります。自宅で各部位30秒程度の時間をかけて、ゆっくりと伸ばしてみましょう。また、ストレッチの際には、左右差を感じたり、部位によって緊張が強いところを自覚できたりするので、同時にコンディションのチェックにもなるのです。柔軟性に乏しい部位はセット数を増やすなどして、調整できるといいですね。
 
【リンパへのアプローチ】
 私たちの体内には、血液が流れる血管が全身に張りめぐらされているように存在しますが、その血管に沿うようにリンパ管も存在します。リンパ管は、老廃物や疲労物質、細菌などの有害物質も同時に回収してくれて、節々に存在するリンパ節がこれらのフィルターの役目を担ってくれています。
 
 運動後や自宅で時間のある時に、リンパ節を刺激し、活性化させ、リンパ液の流れを促進させてあげることで、疲労回復に役立てることが可能です。今回は下肢を例にご紹介しますので、是非実践してみて下さい。
 
 直接下肢にアプローチする前に、準備として鎖骨のリンパを刺激しておくとより効果的です。鎖骨の上にあるみぞのような部分を、両手の四本の指を使って優しくなでるように刺激しましょう。
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 次に、鼠径部です。脚の付け根の部分を同じように優しく刺激します。下から上に向かって半円を描くようになでましょう。同様に膝窩リンパ節も活性させます。膝の裏の部分を、両手で円を描くように20回程度なでてみましょう。
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 準備が整ったら、リンパ液を流すようなイメージで身体の下から上へとマッサージしていきます。その際に、リンパ節を経由させるように押し流しましょう。足部から膝の裏へ、続いて鼠径部へといった流れです。通常のセルフマッサージの際に、この流れ(方向)を意識して行うだけでも効果が変わってくると思います。
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 最後に、疲労回復に大切なのは身体への直接的なアプローチだけではありません。食事(栄養)や睡眠(心身の休息)も欠かせない要素です。競技を行うために何が必要かを改めて確認した上で、パフォーマンスの向上へとつなげて下さい。明日も気持ち良く身体を動かせるように、クールダウンまでがトレーニングという意識を持って、取り組んでいきましょう。
 

 

 

 

16/01/06
【コンディショニング講座】第8回股関節の動きに着目

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【股関節の違和感?】
 練習の強度が上がったり、試合が続いたりすると、「股関節が痛い」、「股関節がつまるような感じがする」と訴えてくる選手が現れます。もともと股関節の使い方があまり上手ではなかったり、入念なセルフケアを行っていても、そのやり方が不十分であったりするケースが多い印象です。腰痛など、他の部位の痛みや違和感を訴える場合でも、同様のことが言えます。
 
 日本の女子フットサル界には、サッカーからフットサルに転向してきた選手が多く存在する印象ですが、競技環境や競技特性の違いに身体が対応しきれていない部分もあるのでしょうか。狭いコートの中で、より素早い方向転換が求められるフットサルの場合は、バスケットボールのようなフットワークも求められます。そのための脚力がしっかりしていなければ、繰り返される動作やそれによる負担から痛みを誘発してしまうこともあります。
 
 また、選手たちのストレッチングやトレーニングを見ていると、股関節の前後の動きは意識しているのですが、それ以外の動きに対する意識が低い印象があります。たとえばストレッチングの場合、太ももの前(大腿四頭筋)や太ももの裏(ハムストリングス)はしっかり伸ばしているのですが、内側や外側はどうでしょうか。強化やメンテナンスにアンバランスさが生じると、それも不具合の原因となり得るのです。
 
 
【股関節は多方向に動く】
 股関節は屈曲、伸展だけでなく、内転、外転、内旋、外旋といったように、あらゆる方向に動かすことが可能な関節です。日常生活でも競技中でも、実際にはそれらの動きがうまく組み合わさって様々な動作を可能にしているのですが、どうしても前後方向への意識ばかりが強くなってしまいがちです。ウォーミングアップでも、トレーニングでも、セルフケア(メンテナンス)でも、他方向への意識を忘れずに取り組むことで、よりスムーズで繊細な動作が可能になりますし、アンバランスさから生じる痛みや違和感を事前に防ぐことができるのです。それらを指導していると、寝た状態や座った状態、つまり足が地面に接地しておらず体重がかかっていない姿勢ではすぐに動かせるようになるのですが、立位で荷重した状態では上手く動かせなくなってしまう選手が目立ちます。このあたりに、改善の余地がありそうですね。実際に、股関節を回すようなエクササイズを指導した後に、「走りやすくなった」、「足が前に出やすくなった」、「ボールを思い切り蹴りやすくなった」、「他の部位も軽快に動くようになった」という感想をいただくこともあるんです。
 
 それから、日本のフットサル選手を見ていると、O脚の選手が多い印象もあります。O脚の選手はどうしても外側荷重になりやすいですし、放置しているとどんどん外側重心が助長されてしまいます。触ってみると、太ももの外側あたりが張って固くなっていたりします。こういったケースも不具合の連鎖を生み出し、他の部位にまで影響を及ぼしますから、積極的に改善していった方が良いでしょう。
 
 身体のどこか一部が動かしづらい、どこか一部が重い・張っている・違和感があると思ったときには、ストレッチングなどを行う際に、それまで意識的に動かしていなかった方向に着目してみて下さい。身体の内側や外側を伸ばしてみたり、身体を回旋させたりねじったりするような動きを加えてみることで、軽くなったりその後の動作がスムーズになったりすることもあるでしょう。
 
 
【エクササイズの例1】
 あお向けになり、足を肩幅より広めに開きます。両手は広げ、両肩が床から離れないようにしましょう。足幅を保ったまま、両膝を同時に右に倒し、続いて左に倒します。股関節の動きを意識しながら、リズミカルに20回程度繰り返しましょう。
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【エクササイズの例2】
 うつ伏せになり、両手は横に開きます。右足を上げて体の左側に持っていきます。この時、膝は90度くらいに曲げて行いましょう。続いて右足を体の左側へと持っていきます。左右交互に、10回程度繰り返しましょう。
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15/12/10
【コンディショニング講座】第7回フットサルに必要な身体作り

 

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【フットサルに必要な身体作り】
 
「当たり負けしない身体を作るためにはどうしたらいいですか?」
「攻撃的な守備のために脚力をつけたいのですが…」
「怪我を防ぐために具体的にどんなことをすればいいですか?」
 
 最近では、女子フットサル選手からも身体作りに関する質問を多く受けるようになってきました。もっと強くなりたい、もっと上手くなりたいという意識が、より高まってきた証ではないでしょうか。技術的・戦術的な専門練習以外に、特別な時間を割いてトレーニングを行う機会がなかなか見られなかった競技環境ですから、フィジカルに関しては一から見直すべき部分がたくさんあると思います。逆に、これまで取り組んでこなかったところに着目して強化することで、明らかなパフォーマンスの向上や傷害発生率の低下が期待できるのではないでしょうか。
 
【継続するための工夫】
 
 競技のみに専念できる環境があればいいのですが、女子フットサル界の場合は、タイムスケジュールの中から何とか時間を捻出して練習に励んでいる選手が多いのではないでしょうか。そういった選手たちに、さらに時間を作ってあれもこれもと理想を並べても、現段階ではあまり現実的ではない気がします。大切なのは、可能な範囲で継続できることから始めていく、ということではないでしょうか。
 そこでお勧めしたいのが、ウォーミングアップの工夫です。「ウォーミングアップ」と聞くと身体を温めるというイメージが強いかと思いますが、単純に体温(筋温)を上げるだけでなく、本来はより良いパフォーマンスを発揮するための心身の準備と捉えるべきなのです。
 
ウォーミングアップの目的
1. パフォーマンスの向上
2. 傷害予防
3. 体温(筋温)の上昇
 
ウォーミングアップの効果
1. 筋温の上昇
  筋温を上げることにより、筋力発揮をスムーズにする。
  筋の作業効率を上げる。
2. 筋肉・腱の柔軟性の向上、関節可動域の向上
  動作をスムーズする。
  傷害を予防する。
3. 筋肉への刺激
  脳から筋へのインパルスの伝達をスムーズにする。
4. 神経系への刺激
  反応時間を短縮する。
5. 動作の確認
  競技特性を考慮した動作を通じて主運動にスムーズにつなげる。
 
 どこからどこまでがウォーミングアップか、という細かい議論は横に置き、トップレベルの集団で意識の高い選手たちを見ていると、全体のウォーミングアップが始まる前から、それぞれが入念な準備をしている光景が目に入ってきます。足裏をほぐしたり、ダイナミックストレッチングを行ったり、コアトレーニングを行ったりと、すでにルーティーンが出来上がっている選手もいれば、その日のコンディションに応じて内容を調整している選手もいます。
練習や試合の前に必ず行うべきウォーミングアップの時間に、前述の効果を狙いながらパフォーマンスの向上にもつながるエクササイズを取り入れることで、継続的な強化が可能になり、同時に傷害予防にも取り組めるのではないでしょうか。
 
 FIFAが推奨する傷害予防のためのウォーミングアッププログラム『FIFA 11+』も体幹、下肢筋力、バランス、プライオメトリクス、バランス、アジリティに焦点を当てたメニューを多く取り入れていますし、最近では運動前の準備として、「ムーブメント・プレパレーション」を行う選手も増えてきました。前述の効果を満たし、動作中の安定性を維持しながらも動くべきところの可動性を確保します。正しい姿勢を確認し、動作のための軸作りとしても効果的です。このように、準備をしながらも「強化」「向上」という狙いを含めたメニューを取り入れて継続していくことから始めてはいかがでしょうか。
 
【エクササイズの例】
 
 片足でのスクワットですが、体幹や下肢の強化だけでなくバランスの向上にもなります。女性は特に、膝が内側に入らないように注意しながら行いましょう。
 
1. 右足で立ち、左手は上に上げる。
2. 体を倒しながら腰を落としていき、左手で右足付近の床をタッチする。
3. バランスを取りながら身体を起こし、元の位置に戻る。
4. 5回程度繰り返す。反対側も同様に行う。
 
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15/11/05
【コンディショニング講座】第6回テーピング

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第6回テーピング
 
【テーピングを見直そう】
 
 女子フットサル界でも、日頃からテーピングを施してプレーしている選手は多いのではないでしょうか。「動くギプス」とも表現されるテーピングは、運動に支障のない範囲で関節の動きを制限し、その部位をケガから守ったり、特定の筋肉や関節の動きをサポートしたり、ケガに対する精神的な不安を解消し、プレーに集中できるようにしたりします。
ところが、それらの効果は正しい判断のもとに正しい方法で施行されることによって、はじめて期待できるものです。選手たちのセルフテーピングを見ていると、残念ながらその目的に沿った巻き方から外れてしまっている場合も多く、今一度確認してほしいと思うことも少なくありません。各チームに専属のトレーナーさんが常時帯同するという環境が少ないということも原因の一つかと思いますが、改めてテーピングについて見直してみましょう。
 
 
【テーピングの目的】
 
1, ケガの予防
競技やポジションによって、発生頻度の高いケガに違いが出てくると思います。フットサル選手では、足関節の捻挫を予防するテーピングが最もメジャーとなっているのではないでしょうか。ゴレイロであれば手指や手関節に巻くことも多いでしょう。テーピングでは、このようなケガのリスクが考えられる部位を補強することによって、ケガを未然に防ぐ役割を持っています。
 
2, ケガの再発予防
過去にケガをした部位を保護したり補強したりして、再発を防止するためのテーピングです。また、競技への完全復帰までのリハビリテーションの段階で活用することもあります。
 
3,競技中の痛みの緩和や精神的な不安感の軽減
関節の動きを制限したり、特定の部位に圧迫を加えたりして、残存する痛みを軽減させる目的で行います。同時に、過去にケガをした部位に対する不安や、ケガの発生機転となった動きに対する不安を和らげる効果も期待します。しかし、テーピングに過度の期待をせずに、ケガを悪化させないよう注意が必要です。
 
4,応急処置
ケガをした直後に患部を安静固定させる目的で施行します。患部の悪化を防いだり、痛みを緩和させたりという目的で行います。
 
 
【テーピングの効果】
 
1,可動域の制限
ケガの原因となり得る関節の異常な動きを制限し、靭帯などにかかる過剰な負担を軽減します。しかし、それ以外の動きは制限させないように注意が必要です。関節のどの動きを制限させるのか、そのためにはどのようなテープを用いるのか、どのような貼り方をすべきか、しっかりと見極める必要があります。
 
2,特定の部位の補強
ケガなどで弱くなった筋肉、靭帯、関節などを補強します。その部位を補強することで、特に再発予防の効果が期待できます。また、患部を圧迫・固定することで、患部へのストレスを軽減させます。
 
3,精神的な不安感の軽減
受傷した部位を保護したり補強したりすることで、再発に対する不安を軽減させ、プレーに集中させることができます。
 
4,圧迫
肉離れや打撲など、局所的に圧迫を加えることで受傷した筋肉に対するストレスを和らげることができます。
 
 
【テーピングの注意点】
 
1,正確な診断・判断
受傷後であれば医師の診断を前提に、そのケガに適したテーピングを施行しなければなりません。ケガの原因や状態により、テーピングそのものが適しているかの判断から始まります。そして、テーピングする部位の状態や制限したい動きによって、テープの種類、貼り方、強度などを決めます。
 
2,テーピングによるトラブルの回避
テーピングを無造作に、不適切な圧迫をかけて巻いてしまうと、循環障害や神経障害、筋腱障害を引き起こす可能性があります。また、過度な運動制限によりパフォーマンスの低下に影響しないかも気をつけましょう。
さらには、下記の点にも注意が必要です。
 
巻く際にシワを作らない:
シワやたるみがあると、痛みや水ぶくれの原因となることもあります。テーピングの効果が十分に得られないこともありますので、テープを身体のラインに沿って、正確に巻くことを心がけましょう。
 
テープの剥がし方:
皮膚を傷めないように、片手で皮膚を軽く押さえながら、もう一方の手でテープを皮膚と平行になるように丁寧に引っ張りましょう。また、粘着除去スプレー(リムーバースプレー)を備えておくと便利でしょう。
 
テーピング前の保護:
かぶれやすい体質の選手は、なるべくアンダーラップを使用するようにしましょう。また、事前にパッチテストを行っておくと安心です。テーピングを行う部位に傷やマメ、皮膚かぶれなどがある場合には、その部位をガーゼなどで保護してからテープを貼るようにしましょう。
 
 
3,適用時間
プレー時のテーピングは、テーピングの固定力や皮膚への影響を考慮すると、一般的に適用時間は3時間程度が限度となります。二部練習やダブルヘッダーというスケジュールの場合には、練習毎や試合毎に巻き直した方が良いでしょう。
 
4,テープの保管
直射日光の当たる場所や、高温多湿の環境での保管は避けましょう。通気性が良く、湿度の低い環境での保管がベストです。また、テープが変形しないように保管方法にも気をつけましょう。
 
 
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【便利なテーピング用品】
 
テーピングハサミ・テーピングカッター
皮膚を傷つけないように刃先が丸くされたテーピング用ハサミと、皮膚を傷つけないようにテーピング後のテープをカットできるテーピング用カッター。
 
粘着スプレー・粘着除去スプレー
粘着スプレーはアンダーラップを巻く前に使用することで、アンダーラップと皮膚を密着させます。粘着除去スプレーは、テープや粘着スプレーが使用されたアンダーラップを剥がしやすくします。
 
ジェル製保護材や保湿パッド
靴擦れやマメを、プレー中の摩擦や衝撃から保護します。
はがれにくく、痛みを緩和するニチバンのジェルプロテクターはオススメです。
[バトルウィン®ジェルプロテクター®]
 
保湿クリーム
肌荒れが心配な場合や、何日も連続してテーピングしなければならない場合は、皮膚を保護するために保湿クリームを活用しましょう。グランメイトのピュアバリアというクリームは、高い保湿力を備えながら、塗布後もテープがはがれにくく、その効果に影響を与えないという優れた製品です。
[ピュアバリア]
 
 

 

 

 

15/10/06
【コンディショニング講座】第5回海外遠征について

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【海外遠征に向けて】
 
 最近では、女子フットサル界でも国際交流が非常に盛んになってきた印象があります。海外でプレーする選手もいれば、海外で開催される大会に参戦するチームも増えてきました。昨年冬には、フットサルチャイニーズ・タイペイ女子代表を招いて国内初の国際親善試合が行われましたし、記憶に新しい今年9月には、記念すべき第一回AFC女子フットサル選手権も開催されました。国際大会における日本女子代表の活躍にもより大きな期待が寄せられる中、代表チーム以外でも遠征先の選択肢の一つとなりつつある「海外」に向けた準備について、今回はご説明したいと思います。
 
 
【遠征前の情報収集】
 
 異なる環境でコンディションを良好に保つためには、事前の情報収集が鍵となります。渡航目的が観光ではなくベストな状態でプレーするということになりますから、現地の文化に触れながらもいかにベストコンディションを維持するかを考えなければなりません。
 
1) 時差
4時間以上の時差がある場所へ移動すると、時差ボケが起こると言われています。また、東行きの移動の方が西行きの移動よりも時差ボケが大きくなるようです。対策としては、出発の数日前から行き先の時間に近づけるように、生活のスケジュールを1〜2時間ほどシフトしていくといいでしょう。
 
2) 気候
 現地の季節、気温、湿度を把握し、持参する衣類の調整を行いましょう。
 
3) 衛生環境
 異なる環境下では体調を崩しやすくなります。中でも起こりやすいトラブルの一つとして、下痢が挙げられます。原因としては、気候、風土、食事、疲労、ストレスなどが原因になるものと、細菌感染が原因となるものがあります。いずれにしても、衛生環境が良いとは言えない国では、以下の点に気をつけましょう。
 
・生水は飲まない
・氷の入った飲み物は飲まない、飲み物に氷を入れない
・生野菜やカットフルーツは避ける
・乳製品は避ける
・生卵や半熟卵は避ける
・生の魚介類やしっかりと火の通っていない肉類は避ける
 
 その他、感染性胃腸炎などが心配される国では水回りの管理を徹底することで予防に努めます。あまり過剰になりすぎてもストレスになりますが、特に心配された地域では選手たちに以下の点を徹底させたこともあります。
 
・歯磨き、うがい、洗顔もミネラルウォーターで行う
・シャワーの際は口を閉じ、水道水が口内に入らないようにする
・便座を除菌してから、あるいは便座シートを敷いてから便座に座る
・トイレットペーパーがない国(備え付けのホースによる水洗いが基本の国)にはトイレットペーパーを持参する。水に溶けやすいトイレットペーパーが望ましい。
・食事の前に手指消毒剤を使用する
・宿泊先のリネンに使用する除菌スプレーを持参する
 
 食事については、事前に内容を調査できればベストです。前述の注意事項を気にかけ病気の予防に努めるとともに、栄養バランスの乱れや食欲不振などを引き起こさないよう、日本からドライフードを持参したり、食欲を促すために調味料やドレッシング、ふりかけなどを用意するのも一つです。ビタミン不足などを回避するためにサプリメントを活用してもいいですが、ドーピング問題を考慮してJADA認定商品マークが貼られたものを選びましょう。
 
4) 予防接種
 入国に際して必要な予防接種はないか、行き先で流行している病気がないかを事前に調査しましょう。大会によっては主催者側から通知されることもあります。過去に受けた予防接種を確認するためにも、母子手帳は大切に保管しておきましょう。
 
5) 現地の医療体制
 日本大使館や現地の日本人コミュニティの協力を得て、安心して受診できる医療機関を調べておきましょう。
 
 
【機内での過ごし方】
 
 飛行中の機内は、航空会社によって多少の差はあるようですが、客室内温度は22〜25度前後に保たれているようです。ブランケットが用意されている場合がほとんどですが、身体が冷えないよう調整できるように、夏場でも上着などを用意しておくといいでしょう。また、乾燥対策も必須です。一般的に、長時間のフライトの際は機内の湿度が20%以下にまで下がると言われていますので、目の乾きや喉の痛みといったトラブルを回避できるように工夫して下さい。具体的には、下記の点を気にかけるといいでしょう。
目薬を使用する
機内ではコンタクトレンズを着用しない
水分をこまめに摂取する
マスクを着用する
飴を舐めたりして口内の乾燥を防ぐ
 
 遠征のための移動ですので、機内でアルコールを摂取することはないかと思いますが、水分補給としてのアルコールは適切な判断とは言えません。機内は標高が高い山と同じくらい気圧が低くなりますので、地上にいる時よりも酔いやすくなります。また、アルコールに限らず利尿作用のある飲み物(カフェインを含む飲み物など)は体内から水分を排出し血栓ができやすくなることもありますので、控えめにした方がいいでしょう。
また、機内の乾燥による脱水と長時間の座位により身体を動かさずにいると、血液粘度が上昇し下肢の静脈に血栓が形成されるリスクが高まります。エコノミークラス症候群とも言われ、8時間を超えるロングフライトでは特に気をつけなければなりません。この血栓が血流にのって肺まで流れると、肺血栓塞栓症につながり死にいたることもあります。予防策は下記の通りです。
座りながらもできる足の運動(足の指や足首を曲げ伸ばししたり回したりする)を時々行う
お手洗いに行く際などに少し歩いたり狭いスペースでも可能なストレッチなどを軽く行う
血行が悪くなるのを防ぐため、座っている時に脚を組まないようにする
水分補給をしっかり行う(利尿作用のある飲み物は避ける)
身体を締めつけない、ゆったりとした服装で過ごす
 
 機内では時計を行き先の時間に合わせ、少しでもそれに沿った過ごし方を心がけましょう。事前に機内食について調べ、補食を持参するなど対策ができればベストです。ロングフライトの場合は離陸後と着陸前に機内食が出され、場合によっては間食のサービスもあります。しかしそのタイミングが現地時間とは一致しないケースもありますので、工夫しましょう。アレルギーなどがある場合は、事前に航空会社に相談すれば対応していただけます。
 常備薬を持参することも大切です。体調が悪くなった場合に備えて、機内にも医薬品が搭載されていますが、海外の航空会社の場合には海外のお薬になりますし、病状や医薬品の効能、服用の注意点などを外国語で確認しなければなりません。常備薬を持参していれば安心ですし、体調に不安がある場合は出国前に医師に相談しておきましょう。
 現地に到着後は、生体リズムを同調させるために軽い運動を取り入れましょう。日中であれば太陽光を浴びることも効果的です。移動による疲れや出発国の時間(日本時間)の通りに睡眠を取ってしまうと時差の影響が取れにくくなってしまうので、現地時間の夜になってから就寝できるように心がけて下さい。
 
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【現地でのコンディションチェック】
 
 毎朝起床時に体重や体温、脈拍数を測定することは、体調のチェックに役立ちます。また、就寝から起床までの夜間排尿回数により時差ボケの影響を把握することができます。普段とは異なる環境だからこそ、体調不良を未然に防ぐためにできることを積極的に行いましょう。
 最後に、文化も宗教も生活習慣も異なる地域では戸惑うこともあるかと思いますが、現地で生活する人々が笑顔で暮らすその環境をリスペクトし、まずは受け入れる努力をしましょう。そこにはお互いの国の価値観の差が存在するだけです。異文化に触れる貴重な機会に感謝しながら、その環境でいかに心身の状態を良好に保ち、ベストパフォーマンスを発揮するためには何が必要かを考えていきましょう。
 

 

 

 

15/09/03
【コンディショニング講座】第4回女性の身体の特徴

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【女性の身体の特徴】
 
男性と女性の身体つきに違いがあるのは明らかかと思います。では、それが競技やケガのリスクにどのように関与するのかを視野に入れながら、いくつかの特徴を取りあげてみましょう。
 
最も大きな違いは、骨盤の形態です。男性では縦に大きく、女性では横に幅広いという特徴があります。そのため、女性の場合は股関節の位置が身体の中心よりもやや遠い位置に存在します。こういった骨の配列から、女性の膝は男性に比べて外反傾向にあり、内旋しやすく外旋しにくいとも言われています。
 
それから、皆さんは体力測定などで関節の緩さを把握するためのテストを受けられたことがあるでしょうか。
 
関節弛緩性テスト
1)手関節:手首を曲げ、親指が腕につくかどうか
2)肘関節:肘を伸ばしきったときに、肘が15度以上反るか
3)肩関節:片手を上から、逆の手を下から後ろに回し、背中の後ろで両手の指を握れるか
4)股関節:かかとをくっつけて立ち、両足を外側に180度以上開けるか
5)膝関節:立位姿勢で膝が10度以上反るように伸びるか
6)足関節:足裏を床から離さずにしゃがんだ際に、足関節が45度以上曲がるか
7)脊柱 :立位で前屈した際に、手のひら全体が床につくか
 
全身で7部位の項目を測定する関節弛緩性(かんせつしかんせい)テストでは、女性の方が陽性になりやすく、男性よりも全体的に関節が緩いという傾向が見られます。この関節弛緩性テストとケガの発生率の関連性は議論がなされているところですが、たとえば膝関節に弛緩性があると、膝蓋骨脱臼や前十字靱帯損傷などが多く発生するという報告などもあります。なお、月経周期に伴う内分泌変化が関節弛緩性に影響を及ぼすという報告もありますが、現在のところは断定できるようなものではないようです。
 
その他、骨格が成熟するのは女性の方が早い、体重に占める除脂肪量や筋重量の割合が低い、などの特徴が挙げられます。これらを踏まえて、ケガを防ぐための取り組みを積極的に行っていきましょう。
 
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【疲労骨折】
 
男女の骨密度を比較すると、女性の方が低い値を示します。また、女性アスリートの方が疲労骨折の発生率が高いという報告もあります。特に持久系の競技で無月経を伴う場合や、厳しい体重管理のために食事制限などをしている場合には気をつけなければなりません。
無月経を長期間放置してしまうと、難治性の排卵障害につながる可能性もあれば、アスリートの場合は骨強度の低下により、骨粗しょう症と同様の状態を招いて、疲労骨折のリスクを高めてしまうこともあります。無月経期間が三か月以上続くようであれば、早めに婦人科を受診しましょう。そして「無月経」、「骨粗しょう症」「low energy availability (利用可能エネルキ?ー不足) 」を女性アスリートの三主徴と呼び、その健康被害が危険視されていますが、競技にリスクは付きものと軽視するのではなく、気になる点があれば積極的に専門家に相談するようにしましょう。
 
【傷害予防のためにできること】
 
女性の身体特性について改めてまとめてみると、下記のようになります。
・骨の配列に特徴がある(骨盤が広い、膝の外反が大きい)
・関節の弛緩性が高い
・筋力が少なく体脂肪が多い
・月経の影響を受ける
これらの特徴を踏まえると、外傷や障害の予防のためには以下のことを念頭に置き競技に臨みましょう。
 
・正しい姿勢を保持する
・競技において適切な基本動作を習得する
・関節の安定性、支持性を高めるために、関節周囲の筋肉を強化する
・オーバーユースに気をつけ、しっかりと休息を取る
・身体組成をきちんと管理する
・適切な栄養を摂取する
・月経異常があれば早急に専門家に相談する
フットサルはストップ動作や方向転換が比較的多く見られる競技です。特に日本のフットサル選手はサッカー出身者が多く、競技転向の直後は狭いコートでの激しい方向転換に身体がついていかないこともあるかもしれません。その際に身体の各関節がしっかりと連動しなければ、ケガのリスクは高まってしまいます。
たとえば、膝関節の前十字靭帯損傷が女性に多い理由として、女性の場合は着地時に膝の外反がさらに大きくなりやすいという報告もあります。こういった動作を修正することが予防につながります。フォームを確認し、正しい身体動作を習得するためには繰り返し動作練習を行ったり、各種エクササイズや競技練習の際に常に意識して取り組むことが大切です。最近では様々な競技団体が、こういった予防用のプログラムを提供していますから、参考にしてみるといいでしょう。
 

 

 

 

15/08/06
【コンディショニング講座】足のトラブル

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第3回足のトラブル

【足を大切にしていますか?】

走る、止まる、ジャンプする、着地する、ボールを蹴る…。フットサル選手にとって最も大切とも言える「足」は、身体の全体重を支持したり、負荷や衝撃を吸収したり、スムーズな動作や安定性の確保のために重心移動に貢献したりと、競技をする上で欠かすことのできない重要な役割を担ってくれています。そのために、足は26個もの骨や100以上の靭帯(じんたい)から構成されており、小さな面積でも大きな負荷や強い衝撃に耐えられるようになっているのです。両足の骨だけで身体全体の骨の約4分の1を占めるということからも、その複雑な構造と身体における重要性をお分かりいただけるかと思います。
 
しかしながらその足を、トラブルが起きる前から入念にケアしているという選手は、意外と少ないのではないでしょうか?足本来の機能をしっかりと発揮させてあげることで、身体への余計な負担も軽減し、疲れにくく動きやすい身体へと変化するということを実感していただきたいと思います。 
 
 
【足と向き合ってみよう】
ただ立っているだけでも常に重さに耐え続け、シューズにより締めつけられた足はガチガチに固まってしまい、何もしなければ柔軟性を失い本来の機能を果たしにくくなってしまいます。まずはその足を解放してあげましょう。入浴の際など、足の裏だけでなく足の甲まで、固まった骨同士が一つ一つ解放されていくのをイメージしながら、優しく筋肉をほぐしてあげるようにマッサージしてみましょう。
 
それから足の指でじゃんけんをするように、意識的に大きく動かしてみましょう。リラックスして座り、足の指をぎゅっと締めてグーを作ります。その後に5本の指をできるだけ大きく広げ、パーを作ります。親指と人差し指を引き離すようにチョキを作るのも良いでしょう。これらを繰り返しますが、指が思うように動かない人は特に、継続して行うことで足や指の筋肉を目覚めさせてあげましょう。これらは外反母趾や扁平足の予防にもつながります。
 
また、「筋膜」という視点から見ても、足裏は重要なパーツとなっています。筋膜は全身の筋肉や臓器を覆っている膜のことを指しますが、額から身体の後面へと続く筋膜は、足の裏までつながっています。ですから足の裏をゆるめることによって、ふくらはぎや太ももの裏(ハムストリングス)、腰背部までゆるみ、身体がラクになることもあります。
 
例えば、立位体前屈をしてみて下さい。指先や手の平が床につくでしょうか。その時に、身体の背面に張りを感じるでしょうか。一度確認した後に、ゴルフボールや硬いテニスボールなどを踏んだり転がしたりして、足裏をほぐしてみましょう。竹踏みなどを活用してもかまいません。両足の裏全体がほぐれてきたのを感じたら、再び前屈をしてみて下さい。先ほどよりも柔らかくなり、手が床につきやすくなったり、ふくらはぎや太ももの裏、腰に感じていた張りが軽減していることでしょう。
 
足のトラブルは全身のトラブルへとつながります。問題の原因となっていることも、改善策も、選手個人によって様々ですから、何らかの症状があれば早めに専門家の指導を受けることをおすすめします。
 
【靴擦れへの対処】
シューズとの相性やサイズの不適合などで靴擦れを起こしてしまい、足の指やかかとに水ぶくれ(水泡)ができてしまうことがあります。発見するとすぐに潰して水を抜こうとする選手が多い印象ですが、感染などのリスクもあるため基本的には無理に潰したりしない方がいいでしょう。
 
しかしフットサルのように足を酷使する競技の場合、練習や試合中の激しい動きによって水泡が破れてしまうこともあります。そのような場合はすぐに水道水で患部を洗浄し、ジェル製保護材や保湿パッドなどを活用して保護するようにしましょう。自然治癒を助け、動いてもずれにくく皮膚にフィットするような優れた保護パッドも、最近ではドラッグストアで簡単に手に入るようになりましたから、チームとして常備しておくと便利ですね。
 
破れた皮膚が残っている場合は無理に剥がそうとせずに、洗浄後ピンセットなどで元の位置に整えてから、ワセリンを塗布して保護材で覆うようにしましょう。
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【靴擦れを防ぐために】
まずは自分の足に適したシューズを選ぶことです。同じサイズでも実際に履いてみた時のフィット感はシューズにより様々です。また、着用後時間の経過とともにつま先や横幅がきつくなっていくこともあります。きついシューズは靴擦れの原因になるだけでなく、足の爪を傷めることもありますし、足が本来の機能を果たせない窮屈な状態では身体の他の部位にも影響を及ぼし、余計な疲労の蓄積や障害・外傷の発生リスクを高めてしまうことにもつながります。
 
また、かかとがきちんとフィットするかも大切なポイントです。かかとがすべるような素材で出来ており、着用中にシューズの中で足が動いてしまうような場合も、靴擦れを引き起こす原因になり得ますから、試着の際はデザインやサイズだけでなく、こういったポイントも気にかけてみましょう。
 
最適なシューズを手に入れた後、それが足に馴染むまでは予防の意味で指やかかとにワセリンを塗布したり、靴擦れを起こしやすい部位をあらかじめ保護パッドなどでカバーするといいでしょう。シューストレッチャーを活用し、サイズの微調整により足にフィットさせるというアプローチもあります。明らかな皮膚の損傷がなくても、痛みや違和感があればそれ以上悪化させないように前述の方法で食い止めることも大切です。些細なトラブルでも足の場合は特に影響が大きいことを踏まえ、大切に労っていただきたいと思います。